広島市特定社労士、労働紛争解決センター byふちがみ労務管理センター

残業代や解雇予告手当は、労働基準法で定められた労働者の
当然の権利です。金額が60万円以下なら少額訴訟があります。
1人でできて、費用も安く、原則1回裁判所へ行けばOKです。

  
    少額訴訟の起こし方と進み方 
        

     1.少額訴訟とは
    
相手と争っても決着が着かないときどうするか、まず考えるのが訴訟を起こすことですよね。
    でも、弁護士に知り合いはいないし、頼むと高いし、裁判となると裁判所に何回も行かねば
   ならないし、時間がかかるし・・・ということで、特に争う金額が少ない場合、
   
あきらめる、つまり泣き寝入りする人が多いのが現状です。     
   そんな人達を少しでも救おうという趣旨で、平成10年から設けられたのが、少額訴訟です。
     少額訴訟には、次のような長所があります。
      
           ①訴状作成が簡単である
              
少額訴訟は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に訴えますが、簡易裁判所には少額訴訟用
                の定型的な訴状の書式が用意されており、わからない点は書記官が教えてくれます。ですから1人で訴状を
                作ることが出来ます。

           原則1回の裁判で終わる
            
 通常の裁判は、終結まで早くても1年、普通は2~3年かかりますが、少額訴訟は、原則として1日の裁判で
                 判決が出ます。そして、この1日の裁判も訴状を提出してから原則1ヵ月以内に行われます。

            費用が安い
               
少額訴訟なら弁護士は必要ないので(勿論、依頼することは出来ます)、弁護士費用がかかりません。      
                
60万円の少額訴訟なら、印紙代5400円と郵便切手代4~5000円しか費用はかかりません。
                 
平成16年4月1日以降に申し立てた事件については、元金60万円まで少額訴訟での手続が
                 認められるようになりました。その前までは元金30万円まででした。
                 少額訴訟が、より一層利用しやすくなりますね。

                 

            しかし、少額訴訟も長所ばかりではありません。次のような短所もあります。
     
            60万円以下の金銭の支払を目的としたものに限られる。
    
訴える金額は、元金が60万円以下に限られます(上記のとおり、16年4月からは元金60万円 まで少額
       訴訟手続が行えるようになりました)。
       しかし、例えば90万円の残業代不払請求の訴訟をする場合、60万と30万の2回に分けて少額訴訟
       することは可能です(この場合、最初の訴えを起こす時に、60万はあくまで90万のうちの一部として請求する
                ことを明確にする必要があります)。
                   なお、60万円以下というのは、あくまで元金のみを指すので、例えば、元金60万円と利息、損害金50万円
                 の支払を求める少額訴訟を起こすことは可能です
     
            ②事件が単純なものに限られる
              
少額訴訟は、1回の裁判で判決を出すことを原則としているためあまり複雑な事件は除かれます。
        
            相手方が少額訴訟を望まないと通常訴訟になる         
              少額訴訟の訴状を簡易裁判所に提出後、訴状が被告に送達されますが、被告が、少額訴訟でなく、通常
              訴訟を望むときは、通常訴訟により裁判を行うこととなります。

   
        2.少額訴訟の起こし方

         <事 例> 
           甲さんは、乙社に勤務していたが、平成16年3月22日(月)に人事部長より会社の業績 
          不振を理由に今月末日で解雇する旨の通知を受けた。甲さんは、3月31日(水)に退職した。

                                     
       
           甲さんは、友人の社会保険労務士丙さんに会い、失業給付の受給方法等を相談した。

            丙さんは甲さんに「解雇予告手当は何日分貰った?」と尋ねたところ、甲さんは「総務部に
           聞いたけど、乙社にそんな制度は無いと言われたよ。」と答えた。丙さんは、「甲の場合、
          22日分の平均賃金にあたる解雇予告手当を請求出来るよ。労働基準法で定められている
          んだ。」と甲さんに教えた。

             解雇予告手当使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくても30日前に予告しなければなりません。
                     30日より前、例えば20日前に解雇する場合は、10日分の平均賃金を支払わねばなりません。
                       勿論、解雇予告手当を支払っても解雇が有効かどうかは別問題です。従業員を解雇するには、
                             合理的な理由が必要です。
                         詳しくは、-職場のトラブル(正社員編)の「整理解雇は不当解雇?」をご参照下さい。

                          ”職場のトラブル事例-正社員編”へ

           丙さんは、甲さんに対し、少額訴訟は一人でも出来ること、乙社の所在地の簡易裁判所へ
           申し立てること、裁判所へ行けば定型の訴状の用紙が置いてあること等をアドバイスした。

                          
                                   
       
           甲さんは、簡易裁判所へ行き、少額訴訟用の定型用紙を貰った。また、不明の点は裁判所
           の書記官に聞いて教えてもらった。 

                                   

              4月12日(月)。甲さんは、自分で書いた訴状2通と乙社の商業登記簿謄本、証拠として
           提出する解雇予告通知書、解雇理由証明書のコピー2通を持参し、簡易裁判所へ到着。売
           店で収入印紙3000円と郵券(郵便切手のことです。被告に送達する訴状等に使われ、料金
           は原告や被告の数により異なります。訴訟が終わって余っていれば返してくれます。)3910円
           を購入した。そして、収入印紙を訴状に貼付し、受付窓口に書類一式と郵券を提出した。
            その際、今後の少額訴訟の進み方等について書記官より説明があった。

                                  ↓

              4月20日(火)。簡易裁判所から甲さんに電話があり、事前に乙会社と交渉したのか、和解
             で事件を終結させる気があるか、相手方は裁判に出席する可能性等について尋ねられたの
            で、甲さんは正直に返答した。

                                  
       
               4月26日(月)。簡易裁判所から口頭弁論期日の呼出状が届いた。日時は5月6日の午後
            1時、場所は××号法廷となっていた。

                          
                                   
       
             5月6日(木)。いよいよ裁判の日が来た。甲さんは訴状のコピーと解雇予告通知書等証拠の
           原本、そして期日呼出状を持参し、定刻10分前に指定された××号法廷へ到着。係員から出
           頭カードに名前を記入する様指示があり、その後入廷した。
        
                                 ↓
                           
           法廷の中には大きなラウンドテーブル(円卓)があり、着席した。乙社からは人事部長が代理
           人として来ていた。その後、裁判官と書記官が着席し、裁判が始まった。
            冒頭、裁判官から少額訴訟についての説明があった。裁判は、乙社が全面的に非を認め、
          スムーズに進行した。
            そして、最後に裁判官より「乙社は甲に対し
金22万円(22日分の平均賃金)とこれに対す
           る平成16年4月1日(解雇日の翌日)から年5%の割合による金員を支払え。」という甲さんの
           主張が、全面的に認められた判決が言い渡された。  
      
       
        3.少額訴訟に適した事件は?
      
     事例は甲さんの全面勝訴となりましたが、勿論、全ての事件がこの様になるわけではありま
           せん。では、甲さんの勝因は何でしょうか。それは乙社が全面的に非を認め、争わなかった
           からですよね。それでは、乙社が争う姿勢を見せたらどうなっていたでしょうか。その場合、
            甲さんは自分の言い分が正しいという証拠が必要になります。事例では、解雇予告通知書等
           により、解雇予告日と解雇日の間が30日以上ないことが明らかなため、乙社も争う事を避け
           たのでしょうが、もし、これらの書類を甲さんが持っていなかったなら、どうでしょうか。

             乙会社は30日以上前に解雇予告したと主張するかもしれません。そうなると甲さんは、それ
          を覆す証拠が必要になります。書類がなければ証人でもOKです。甲さんが解雇予告を受けた
          のを聞いた人がいればその人に証人になってもらいます。そして、裁判で証言してもらえば、
           甲さんが裁判に勝つ可能性は高くなるでしょう。

           少額訴訟に限らず、裁判に勝つには、特別な場合を除き、証拠が不可欠です。正しい方が勝
          つとは限りません。裁判官もスーパーマンではありません。原告、被告どちらが正しいかを判断
           する最も重要なものは、有力な証拠と言えるでしょう。

       
           最後に少額訴訟を起こした方が良いケースをまとめてみましょう。
            
            ①請求する金額(利息や損害金は含みません)が60万円以下である。
            ②相手方が争ってくる可能性が低い。
             ③相手方が争ってきても、こちらの主張を明らかにできる確かな証拠がある。
             ④事件が複雑でない(少額訴訟は原則1回の裁判で終結するため、証人が何人もいたり、
              事件の争点が沢山あるものは、少額訴訟を提起しても、裁判所や被告により通常訴訟へ
              移行される確率が高いです)。

             ⑤相手方に支払能力がある(裁判で勝っても、相手が倒産したりして支払能力がなければ
              どうしようもありません)。
             ⑥相手方の所在地が明らかである(相手方の所在地が不明でも訴訟は起こせますが、少
              額訴訟の場合、訴状が相手方に届かない場合は、通常の訴訟に移行されます)。

           これらの条件に当てはまるなら、少額訴訟を提起されたら如何でしょうか。
           黙っていても1円も貰えません。
         
 解雇予告手当や残業代は、労働基準法で定められた労働者の当然の権利なのですから。

       

    

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